新聞は、滅びゆくテラノザウルス・レックスだろうか?


■ブログは、ダビデになり得るか?■
  Newsweek日本版(2006.3.15)の表紙で、「ブログは新聞を殺すのか」という惹句が踊っていた。ブロガーではないが、ブログマンな私は興味を惹かれて買った。読んだ。思えばネットは新聞を殺すのか?という議論は、第一期ブログブーム*1で百家争鳴の中心命題であった。今度は、ネット内で成長著しい新興拡大勢力であるブログが、新聞キラーとして登場した。刺客は交代したわけだが、ターゲットは変わらず”新聞”である。それほどまでに、新聞という媒体は、殺傷して勝ち名乗りを挙げるに値する巨人ゴリアテなのだろう。


■いきなり真珠湾を目指すなかれ!■
  しかしね、いきなり全盛期のマイク・タイソンに戦いを挑むのは、いかがなものだろうかね?まずは、曙太郎あたりを倒してみたらどうか?あるいは、この世の栄華を謳うGoogle打倒を標榜する前に、「はてなに追いつこう!」という身の丈を自覚したらどうか?例えが先行してしまったが、巨神兵ナベツネたる新聞を叩き潰す前に、週刊誌あたりを俎板に載せて、「食うか?食われるか!」の議論をした方が現実的ではなかろうか?殺す、なんて下劣禁忌なる言葉を大言壮語する前に・・・。

  私見を端的に述べるならば、「ブログが新聞を殺す?はあ?」である。ブログが週刊誌を駆逐する、というのは局地的にはあると思う。”週刊誌バブル”を生み出したライブドア問題。マンション偽装事件もツッコミどころの百貨店だったが、ライブドア問題はそれ以上の満艦飾を呈している。まずは、証券取引法違反という地味な嫌疑を派手に飾った劇場型強制捜査。直後、キーマンが他界し、その謎解きに奔走するお茶の間老若男女。そして、商法違反疑惑が持ち上がり、ライブドア錬金術がネタを提供。さらには、海外の裏口座への蓄財、あるいは裏社会との接点、政界を巻き込むスキャンダル*2・・・。

  それぞれのネタが黒々しいころもあり、世の中の”事情通”なる人々が、匿名実名を問わずネット上で情報を交錯させていた(いる)。素人の私がネットサーフィン(死語?)していただけで、飲み屋で”事情通”を誇る程度に情報入手が可能であった。そして、それから数日のタイムラグを置いて、紙媒体である週刊誌がネット情報を多少膨らませた記事を掲載していたものである。そういう情況を、リアルタイム身近に体験した私としては、局地的にではあるが、「週刊誌の役割は終わったのかもしれんね?」と思ったものである*3


■週刊誌も捨てたものじゃないさ!■
  だがしかし、あくまで局地的に、である。例に挙げたライブドア問題、という”検索ワード”ありき、の即時的情報収集に、ネットは有用だ。しかし、週刊誌(ひいては、ネット陣営が仮想的と見なす新聞)は、検索ワードありき、の媒体であろうか?ちがうよね。
私は、週刊文春2006.2.16号を”検索ワード”「香港現地取材:堀江「隠し資産」口座担当者を直撃」に惹かれて、320円を出して購入した。まずは、目当ての記事に飛びつき、舐めるようにじっくりと読んだ。読み終えて、自分の中で、咀嚼思考し、背景を想像して自らの生活と比較考察したものだ。そして、すぐさま雑誌ブツを焼却処分した、わけではない。320円を出したのだから、他の記事も読んだ。「「学級会」と嘆くタイゾー君の意見」とか、「原色美女図鑑:小林聡美」とか。前者は、詰まらなくて途中で放擲したが、後者は、「大人の色気がある人だな、うむ」と嘆息し、気になったので「小林聡美」を検索ワードとして、Googleに放り込み、彼女の来歴を調べたものだ。いわば、ポータルサイトとしての週刊誌。

  なにしろ週刊誌は有料だ。多少なりともマイ・アンテナにビビッ!と来たものについては読み、あるいは眺める。そこから広がる興味もあるだろう。それに対して、ネットは基本的に無料だ。巡回しているブロガーさんのエントリでも、興味がなさそうなブツであれば読まない。読まないことに金銭的罪悪感は、まったく感じない。

  反論はあろう。人生に付与された時間はあまりに短く儚いものである、と。つまらない情報を有料だからって、目通しして時間を浪費するのは、人生の浪費である、と。タイム・イズ・マネー*4。だがしかし、時間はそれほどまでに、キュウキュウと急するものだろうか?時間に追われて汲々とするよりも、アンテナを拡げて、楽しみや趣味を広げることも大切だと思う。例えるならば、Google窓へいかにたくさんの”検索ワード”を放り込むことができるか?という趣味性である。


■私は、馬鹿だったのかもしれない■
  と、ここまでダラダラと書き綴ってきたが、冒頭のNewsweek日本版から引用してみよう。

大手紙は70万部以上の部数を保っているが、のんびりとはしていられない。広告収入の多くを依存するクラシファイド広告(家や中古車などの売買、求人・求職、イベント告知などの案内広告)の市場が、ネットの急速に侵食されているからだ。

  うむ。私は市井に棲まう一読者(=傍観者)として、新聞と対峙するメディアのガチンコ対決を考えてきた。しかし、世間はそんなにも優しく、単純なものではないのだね。資本投下と利益回収。大事なことを忘れていた。カネが入らぬ傾向にある既存メディア。カネという食物を獲得できないメディアという視点で考えるならば、ガニメデたる新聞は滅びゆくテラノザウルス・レックスなのかもしれない。個人としては、細々とでも良いから生き延びて欲しいと思っていますが・・・。

(本稿以上)

*1:あくまで私見です。

*2:ライブドア問題。裁判すら始まっておらず、いずれも報じられていることに基づく記述です。

*3:OrangePiggy【おぴろぐ】さんのコチラが、総括されていてわかりやすいですよ。

*4:THE ROLLING STONESの「Time Waits For No One」。ミック・テイラーの美しいギターソロが素晴らしい名曲です。