梅田望夫「ウェブ進化論」〜その三:表現狂時代の到来?

  優しさの具体例ですが、キーワードは、総表現社会への希望です。総表現社会というのは、いつの時代に起こっても不思議のない社会であり、実際に起こっていたでしょう。しかし、インターネットの発達によって、伝達速度・空間が爆発的に向上した。アマチュアが、文章を書き、絵を描き、あるいは音楽を録音してインターネット上に公開する。それ自体は、本書でも述べられているようにインターネット黎明期から、既に存在していた現象です。と、ここまでは、歴史のおさらいで・・・。


  この段階では、人の目に触れる場(=可能性)が、作り出されたに過ぎません。しかし、本書は次のように未来を説きます。

「何かを表現したって誰にも届かない」という諦観は、「何かを表現すれば、それを必要とする誰かにきっと届くはず」という希望に変わろうとしている。

  何が、諦観を希望に変えようとしているのか?それが、web2.0と総称される新技術だと作者は主張します。玉石混交の玉を選び出すツールが、「希望」への橋渡しとして、日々、研鑽されているという。技術が、単に技術に留まるならば、自己満足に過ぎない。ちょっと大袈裟だけど、「希望」という行き先があって、はじめて入魂された技術になるのだと思います。言葉遊びが過ぎるきらいがありますが。

  作者は、オープンソースについて述べる際にも、不特定多数者の集積をWisdom of Crowdsという形で、新技術を前向きに受容しています。オープンソースは、wikipediaに代表される、公開された空間における不特定多数の共同作業のことです。この作業の是非、成否については、これまでも、これからも議論の尽きないことだと思いますが、作者はあくまでも前向き・楽観的に捉えています。

  過渡期であり、評価の定まらないweb2.0に総称される技術革新。雲を掴むようで、とっつき難いですが、それをなんとか伝達しようという思いが伝わってくる本です。本書で、提示されるのは、あくまで入り口に過ぎませんが、「もっと勉強してみようかね?」と思わせる「優しさ」に包まれています。

(本稿以上)

追記:
システムと評論、いずれにおいても素人の私の感想ですので、その道のプロの方の「書評」をいくつか紹介しておきます。

R30マーケティング時評
H-Yamaguchi.net
404 Blog Not Found


(注意!!)
下のリンクから本書を購入されると、私がAmazonさんから3%(だったかな?)のお金をいただけてしまい、私がお金持ちになってしまうのでご注意ください。。。