梅田望夫「ウェブ進化論」〜その二:バラ色の楽観主義

 前回のつづきです。

 本書が醸し出す、もう一つの「優しさ」について、考えてみましょう。本書は、オプティミズム(楽観主義)という優しさに満ち溢れているのです。いや、満ち溢れているというよりもオプティミズムが、根幹であり背骨となっています。そして、肉付けとしてweb2.0の情況や未来が語られているのです。このことについては、作者自身のブログ・エントリで、あとがきからの抜粋という形で公開されていますので、本書を手に取る前に読んでみるのも一興かもしれません。


  オプティミズムは、優しく心地良いものです。日常の凶悪犯罪、世界のテロリズム等の悲観的なる社会情勢。そして、それが生み出す”将来に対する漠然とした不安”という心理的閉塞感に鬱屈している世の中では、格段の優しさを感じてしまいます。

 本書では、現実世界とネット世界という彼我はあるものの、評価の定まらない新技術に対して、貪欲にその可能性を試行錯誤する姿勢を示しています。新技術といってもバラ色とは限らない。しかし、悲観的に捉えるのではなく、「みんなでいじってみると、素晴らしい技術になるかもしれんよ!」というオプティミズムを提言するのです。

 反例を挙げるならば、「こんなに怖い世界であるよ!」と、まず読者・聴衆の危機感を煽り立てるような末法思想チックな言説から、「だがしかし、コウすれば大丈夫だろうよ!」という消去法的論調ではないのです。こんなに素晴らしいツールがあるのだから、それを活用しない手はないよね、とという前向きの志向性が眩しいくらいに輝いている。

 この二つ目の「優しさ」については、作者が分りやすい具体例を挙げていますので、それを次回、紹介しましょう。

(本稿つづく:次回が最終回です)