中上健二、追記

  先日、noon75さんのイベントに参加するべく、

眠れぬ夜に褌洗う

  というエントリを書きましたが、少し追記しました、と思ったけど、野暮だから、ここに少し追記。

羽田や工事現場でフォークリフトを運転し、荷物の積み下ろしをして妻子を食わせていた中上は、ズボンの尻ポケットにこの集計用紙をたたんで突っ込んでいた。そしてそれを休憩時間や、昼休みや、空いた時間に取り出して、人に見えないところで書いていたということである。

  という中上の執筆姿勢が書かれている。いや、姿勢なんてどうでもいい。紫檀の座卓で書こうが、マホガニーの大机で書こうが、結構。しかし、私が「人生の幸」と書き殴ったのは、時に灼熱、時に厳冬の現場で、妻子を食わせるべく働き、それでいながら、書かずに入られなかった衝動、情動、狂熱・・・言葉で表わせない何者かが彼に憑依していた事実が「幸」であると思ったのだ。

  いや、憑依していたというのは、受動者たる私の逃げ口上だな。中上の精神、そしてもちろん肉体から、言葉で表わせない何者かが湧き出していたのだろうな、と思いを寄せた点において、私は彼が「幸」であると考えたわけである。

(臭い立つ本稿以上)