紀田順一郎「戦後創成期ミステリ日記」(松籟社)
- 作者: 紀田順一郎
- 出版社/メーカー: 松籟社
- 発売日: 2006/04
- メディア: 単行本
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紀田順一郎。ミステリ小説「古本街の殺人」は、割と面白く呼んだ記憶がある。割と面白くということで、その他の作品を読み進んだ著者ではない。で、今回、wikipediaを覗いてみると、「インターネット書斎術」とか、「東京の下層社会」とか気になる本の著者でもあることを知った。前者については頭の片隅に引っかかっていただけだが、後者については古本屋で見つけたので、購入した覚えがある。
さて、本作。題名から推察するに、戦後”日本人作家”のミステリ事情の本かね?と思うかもしれない。坂口安吾とか松本清張とか。あながち間違いではないのだが、中心は、戦後に輸入された海外ミステリの話である。受容史といえるかもしれない。
とにかく、書評というか寸評が雨あられである。公表を意図してない読書ノートからも繰り出されるので、あられもなきネタバレもあり、注意が必要。それ以上に、公表を意図していないが故のあられなき舌鋒、毒舌、貶しが展開されていて、昨今の茶坊主書評とは一味違う爽快な気分を味わえる。
また、各所に挿入されている論評、コラムは読み応えがある。例えば、「黒死論綱要」における小栗虫太郎「黒死館殺人事件」論は秀逸。そして、木々高太郎と甲賀三郎の「探偵小説は芸術か非芸術か」論争を身近で目撃した記録としても興味深い。*1で、ふと思ったのだけど1980年代の新本格ブームにおける綾辻行人、東野圭吾らへの「人間が描けていない」という批判は、木々甲賀論争の再燃だったのだね。
と、色々思うところがある本書。書評あり、コラムあり、インタビューありで、ごった煮の雑誌を読む感覚で楽しめます。
(本稿以上)