カネが余って困ったものだ・・・

ドコモを育てた社長の本音

一兆円損したら、また二兆円稼げばいいんですよ。

  過激な言葉ですが、もちろん私の言葉ではありません。拘留中のホリエモンさんの言葉でもありません。NTTドコモ前社長立川啓二氏の言葉です。NTTドコモは、流行りの「”あちら側”or”こちら側”」という誰何で言えば、”こちら側”の企業ですね。


  遅れましたが、平成18年3月30日付日経金融新聞、「カネ余りが生む大買収時代」と題されたコラムからの引用です。冒頭の言葉は、5年くらい前を振り返っての言葉です。その背景は、次のように解説されます。

ITバブルが真っ盛りの1999年前後、ドコモは総額二兆円弱を投じて海外携帯電話会社の株を買いあさった。その価値の大半はあっという間に毀損したが、(後略)

  ITバブル。懐かしい響きですね。別名、ドット・コム・バブル。何でもかんでも、会社名に「.com」を付け足せば、それだけで株価が上昇したというなんとも牧歌的な時代。光通信株式の暴騰、そして暴落が象徴的でしたね。

  さて、話を戻しまして。2兆円弱ですか。後ほど述べますが、ソフトバンク(SB)のボーダフォン買収金額は、1兆7千億円といいますから、それに等しい金額ですね。NTTドコモは、1998年に東証一部に上場していますから、その翌年から莫大な投資を始めたことになります。今でこそ、誰もが携帯電話を持っていますが、当時は、持っていない人もいて、携帯電話初体験者が生まれる黎明・普及期だったと思います。私が、初めて携帯電話を買ったのも、たしか1998年でした。


  ここで、最近世間を賑わすSBのボーダフォン日本法人買収を考えて見ましょう。現在、携帯電話は、ほとんどの人に行き渡り、これからは”狭義”の「パイの奪い合い」が主戦場になるでしょう。既に持っている人の争奪戦ですね。折りしも、既存の電話番号を持ち運べるというナンバー・ポータビリティが、今年の11月に始まります。これを睨んで、最後のチャンスとばかりにSBが大買収を仕掛けたという論評もみかけます。あるいは、ワンセグですか?よくわかりませんが、携帯電話でテレビが観れるというものですかね?たしかに凄いですね。先行する韓国を紹介するテレビ番組では、飯屋で携帯電話を観ながらプルコギを食べている若者が、誇らしげに微笑みかけていました。

  このように、携帯電話市場は、変革期にあるのはたしかでしょう。しかし、制度変更や技術革新があろうとも、果たして初体験者が生まれる時ほどのインパクトがあるかというと、疑問ですね。例えば、液晶テレビ。液晶大画面になったからといって、テレビであることに変わりありません。テレビという新製品が、世の中に出現した時は、あり余るほど「テレビがない世帯」という未開拓の需要があったわけです。
  しかし、液晶テレビはなくても、テレビはある。売れ行きも鈍化するわけです。したがって、関連企業は、低価格競争に陥穽せざるを得ない。これが、新製品誕生と革新・改良製品浸透の大きな違いだと思います。開拓するべきフロンティアの有無ですね。

  上記記事は、懸念します。

M&Aバブルかと言われればその兆候は出ている」。ある米系投資銀行の担当者は語る。兆候とはM&A資金の出し手となるファンドや金融機関が、投資採算を度外視した資金提供に乗り出し始めたこと。(中略)規律をなくしたマネーが、メガディール乱発の大きな伏線になっている。

  規律をなくしたマネー・・・。お金には、色はもちろん規律はないでしょう。しかし、なんとも扇情的でありながら、実感できる言葉です。五年後くらいから眺めて、日本史上最大のディールであるSBのボーダフォン日本法人買収が、どう評価されるのか、楽しみなところです。

(本稿以上)


【参考】
SBとボーダフォン関連では、アルファなブロガーR30氏が、物の怪に憑かれたように、怒涛のエントリを大量投下していますので、紹介します。

(3月4日)ソフトバンク×ボーダフォン関連まとめ

(3月9日)3/31に緊急イベントやります:ソフトバンク×ボーダフォン

(3月16日)油断も隙もないですね

(3月17日)ソフトバンク孫正義社長 会見質疑応答

(3月18日)日本史上最大のディールについての簡単な感想

(3月30日)「ソフトバンク×ボーダフォン」シンポジウム直前のご案内

と、ペタペタ貼っていて気が付きましたが、本日3月31日にシンポジウムがあるそうで。おそらく、今晩は詳細な速記録エントリがアップされると思いますので、それも楽しみですね^^