A・バークリー「シシリーは消えた」〜一年の計は消えず!

シシリーは消えた (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ) 一年の計は元日にあり。

 で、今は三月弥生ですが・・・。このところ、気分の落ち込みが激しく、ノートにつけている日記帳面で、”一年の計”を振り返ってみました。うむ、流石に新年早々だけあって、荒ぶる計が列記されていましてね。全然、実行の気配すらないじゃないか!と、さらに気分が落ち込んでしまって・・・。


  さて、本題。そのノートをつらつらと眺めていると、「ああ、こんなことも考えていたのだなあ」ということが山ほどあって、本の感想文も混じっていたので、ちょっと公開してみましょう。

  アントニー・バークリー「シシリーは消えた」読了。


  カントリー・ハウス・ミステリ。クリスティのおしどりモノを思わせる。1927年刊行ということで、大恐慌前夜らしく、株式とか株式仲買人が出てくるところが、らしいと言えばらしいと言える。内容は、・・・。ミステリとしては、つまらないに尽きる。バークリーらしい驚天動地の新趣向が無く、赤川次郎みたいなロマンス物。通俗小説。新聞連載小説だっただけのことはある。
  
  カントリー・ハウス・ミステリ(CHM)。クローズド・サークル・ミステリ(CSN)の一系統と捉えるのも可能であるが、CSMの醍醐味であるサスペンスが強調されない。カントリー・ハウスでの集いということ自体が、のんびりした趣向であるし。ただし、人間関係の謎を中心主題に設定するには申し分のない舞台。坂口安吾「不連続殺人事件」もCHMの一種だな、と思った。人間心理の不自然さが、大きなポイントとなっている。そういう意味で、心理重視がCHMの醍醐味、特徴なのかな。
 
  CHMは、推理小説黄金の20年代(1929年の大恐慌で瓦解)に咲いた貴族主義の徒花。不労所得をバックボーンにして、優雅典雅に、郊外の別荘でパーティーを開く。食後には、ブリッジやビリヤードを楽しむ。昼間は、広大で歴史ある贅を凝らした庭園を散策する。そして、ホスト、招待客たちと使用人の間の越えられない壁。物語として使用人には、アイデンティティは与えられていない。読者層は、ホストであり招待客であり、事件も”そちら側”で発生する。しかし、本作では、使用人がこちら側にでてくるところが、新趣向かね?

  なるほど。カントリー・ハウス・ミステリなんて、カッコいい言葉まで造って、なかなか立派だな。「不連続殺人事件」をそこで持ってくるか!と、自画自賛、独りニヤニヤしたりして。日記帳面の字も太く、力強く、勢いがみなぎっていました。

  で、なにが言いたいのかというと、力強く書いていた”一年の計”、時間は経ってしまっているけど、今からでも遅くは無いから、がんばろうと思った次第です。

(本稿以上)


(注意!!)

下のリンクから本書を購入されると、Amazonさんから私に3%(だったかな?)のお金をいただけてしまい、私がお金持ちになってしまうのでご注意ください。。。
  
本文で触れたA・バークリー。「シシリーは消えた」は、触れたとおりの作品ですが、以下の二冊は、ミステリー史上に燦然と輝く名品です。

レイトン・コートの謎 世界探偵小説全集 36

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ジャンピング・ジェニイ (世界探偵小説全集)

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