「坂口安吾集」(創元推理文庫)、そして見えないトラバ

堕落論 (角川文庫クラシックス)

堕落論 (角川文庫クラシックス)

  業界、じゃなくて界隈で、「見えないトラバ」というのが流行っているみたいなので、流行に非常に敏感な私もやってみますね。坂口安吾つながりです。

  坂口安吾といえば、枕詞「堕落論」というのが一般的ですが、ミステリ方面では「不連続殺人事件」というのが枕詞になります。「堕落論」といえば、堕落論も好きですが、角川文庫「堕落論」に所収されている「恋愛論」なんかも好きです。好きです(´・ω・`)・・・。さて、恋愛する前に「堕落論」から引用してみましょう。

人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。だが人間は永遠に堕ちぬくことは出来ないだろう。なぜなら人間の心は苦難に対して鋼鉄のごとくではあり得ない。

  まあ、ベタではありますが、心を打つ文章ですね。「永遠に堕ちぬくことは出来ない」、誰かに聞かせてあげたい(というと偉そうですね、ごめんなさい)、聞いて欲しい一節です。いや、私みたいな第三者チンドン屋が言っても間抜けですね。。。「見えないトラバ」は以上。流行に乗れない私です(´・ω・`)・・・。



  さて、気を取り直して、坂口安吾@ミステリ。「不連続殺人事件」は、前にも述べた気がしますが、心理の足跡を見事に使った傑作ミステリです。心理の足跡も見事なわけですが、冒頭から始まる人物紹介も実はすごいんですよ。なにしろたくさんの登場人物を紹介していくのですが、ダレずに読ませる手腕、というか筆の運びは見事です。こういう芸が、繰り返し読みたくなるミステリとして成り立つ所以だと思います。


  話は戻って坂口安吾。彼の作品で一番好きなのは、「アンゴウ」という掌編です。文字通り、暗号をモチーフにした掌編ですね。この作品は、また文字通り「掌」のような小さな作品で、「掌」に乗る小鳥を連想させる美しい作品です。カテゴリとしては、ミステリに分類されると思うのですが、泣かせます。主人公が、心に濁る謎を解決したときの晴れ渡る心。彼の心が読者の心に乗り移って、爽快な読後感を運んでくれる作品です。

  坂口安吾。多才な人だと再認識した次第です。多才な人といえば、あの人も・・・。

(本稿以上)
ちなみに、表題「坂口安吾集」(創元推理文庫)に「アンゴウ」は収録されています。Amazonの「堕落論」を購入されても、「アンゴウ」は読めませんから、間違えて買わないでね(´・ω・`)・・・。