山頂にて

  私は、山頂に辿り着いた。峻厳であり、時に幽冥な姿が垣間見える山道だった。私が、山頂に到着するのを待っていたのだろうか?登って来た南面が崩れ落ちた。渡渉した湯川は、土砂に埋没している。私は、「しかたないな」と一人ごちて、身体を伸ばした。

  西の方向を見ると、既に焼け野原が広がっている。ことのは台地と呼ばれていたっけ。私は、煙草を取り出して、深く吸い込んだ。煙にむせた。吸い込みすぎたのかもしれない。あるいは山頂の空気が薄かったせいだろうか。いずれにせよ、咳は止まらず、涙が出てきた。悔し涙だ。



ハードボイルドの感傷は、場所を選ばなくてはならない。



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 どのくらい山頂に留まっていただろうか?気配を感じて、北に広がる平原に眼を向けた。燻ぶっている。豊かな実りを世界にもたらしていた平原が。なんと言ったっけ。そうか、マーケティング平原だ。私は、再び零れ落ちそうになった涙を、シャツの袖で拭った。忘れてしまおう。考えても詮無きことだ。いつか、燻ぶった平原から、再び実りが生まれるかもしれない。



ハードボイルドに、悔し涙は似合わない。



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  東の空が燃えている。「ことのは騒動」は、大団円を迎えているのかもしれない。あるいは、まだまだ続くのだろうか?首を振った。帰ろう下界に。多分、私が、世間知らずだったのだろう。



世間知らずなハードボイルドなんて聞いたことが無い。

「世間知らず」は、Akiko Yano & Kiyoshiro Imawanoに限る。



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開店直後の磨き上げられたバー・カウンター。

いつの日にか、「ギムレットには早過ぎるよねえ」と杯を酌み交わしたい。

十年くらい経ったらね。



(本稿以上)


精一杯書いたけど、締まりの無いハードボイルドでしたね^^。私にとっての「ことのは騒動」は、以上で終わりです。今後は、山道を登るように、地に足を着地して生活します。横文字の言葉(ことのは)を新奇なおもちゃのように弄ぶこと。それは、額縁に飾られた山岳風景写真を眺めて、「綺麗だね、美しいよね」って奇麗事を上辺だけの睦まじさで、語り合う姿を想像してしまいます。言霊。私は、睦まじく語るのは、現実世界で恋をするときだけで、十分だと思っています。

雨蛙ケロ助