書評:今年も、たくさんの良い本に出会えて、嬉しかったです。

  今年もいよいよ年の瀬で、ブログなんとかランキングでは、たしか書評部門に登録していたものであるよ!と思い出したこともありまして、今回は、今年読んだ本などのコトを語ってみようと思います。つまらなかった本を紹介するのもヘンな話なので、良かった本の"ランキング"みたいなものでしょうかね。

  まずは、国内小説から選んでみました。

服部真澄バカラ

荻原浩明日の記憶

大沢在昌「北の狩人」

原籙「愚か者死すべし」

⑤戸松淳矩 「剣と薔薇の夏」


バカラ  ①は、つんのめるようにして読んだ本。ジャーナリズムを根底に語りながら、ケレンとしてバカラ賭博、というよりも「カネ」の本質を描いた小説です。この小説を読みながら、"素人"インターネット考察(尻切れトンボになってます)で、"私は、株式等の有価証券を売買するオンライン・トレードが、インターネット・ショッピングの完成形と思っていますが、この項については、別の機会に考えてみたいと思います。"と含みを持たせて、補講という形で書評を書こうと思っていましたが、辿り着けませんでした・・・。



明日の記憶  ②は、こちらで書きました。比喩ではなく泣きながら読んだ本です。涙が邪魔で、なかなか読み進むことが出来なかった本。悟りを開いたような主人公の寛容さは、私も身に付けたいなあ、と今書きながら思いました。泣きたいときに、これから何度も読み返すと思います。



北の狩人  ③は、大沢在昌の「狩人」シリーズの狼煙をあげた小説です。脇役が、シリーズのミッシング・リンクなのですが、これがとても嫌なヤツで、良いヤツで、合計すると魅力溢れる人物という仕掛け。ヤクザ組織側からの人間模様もスパイスが効いていて読み応えがありました。このシリーズは、是非とも続けて欲しいものです。



愚か者死すべし  ④は、こちらで書いたような、書いていないようなところですが、ハードボイルド小説の魅力がテンコ盛りの小説です。2006年を迎えるにあたって、いまだ新シリーズの第二作目は世に出ていないようで、いい加減にしろ!と腹が立ってしまいますね。





剣と薔薇の夏 (創元クライム・クラブ)  ⑤は、非常に地味な小説で、多分、売れなかった本だと思います。大変な誤解を招きかねないですが、あえて言うなら、黒船により開国した日本から、アメリカに派遣された使節団が巻き込まれる、いわば歴史ミステリ。しかし、実際は、ミステリ小説というジャンルを超えています。当時のアメリカ市民が極東日本人に対して、どのような意識を持っていたのかについて、史料を丹念に紐解いて語る歴史文化論の書物です。うーん、ちょっと上手く言えませんが、なにしろ、帰国場面の今生の別れには、グッっときます。文字でしか表現できない、という物語の可能性をたっぷり堪能できる本です(ちょっと大袈裟かな)。




  次は、海外小説&ノンフィクションを見てみましょうかね。

レイ・ブラッドベリ「太陽の黄金の林檎」

②H.F. セイント「透明人間の告白」

ロバート・カーソンシャドウ・ダイバー

④J・M・バーダマン「ミシシッピ アメリカを生んだ大河」

オースン・スコット・カード「消えた少年たち」

  ①は、こちらで書きましたが、翻訳という作業を考えさせられた小説です。と、小難しく考えるよりも、読むが勝ち。短編小説集ですから、気の赴くままにページを手繰り、お好みの掌編を見つけるのも楽しいですよ。

透明人間の告白〈上〉 (新潮文庫)  ②は、透明になった人間が、大都会マンハッタンで生きるサバイバル読本。読みながら、これはマンハッタンのロビンソン・クルーソーだな!と思いましたが、見事に本書の解説で言い当てられて、悲しいような嬉しいような気分になりました。とにかくリアル。透明人間になったら、女湯を覗こうとか、そんな生易しいものではない生活。空想力というものが、小説を創造せしめるのだ、という初心に帰るような小説です。長らく絶版が続いていましたが、新潮文庫で復刊されました。分厚い上下二冊本です。

シャドウ・ダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち  ③は、レック・ダイビング(沈没船に潜ること)を描いたノンフィクション。沈没船に潜るというと、金目のものを引き揚げてウハウハだけの印象がありますが(私だけかな?)、これは深い人間ドキュメントです。登場人物の生い立ちを各所で掘り下げながら、幻のUボートへのダイビング場面を活写するという両刀使いのノンフィクション。ノンフィクション物を書かせたら、悔しいけどアメリカ人には敵わないよな、とため息を吐いたものです。映画化もされるようですね。直球でいくのか?それとも世界大戦を絡めるのか?おそらくは、後者でしょうが気になるところです

ミシシッピ=アメリカを生んだ大河 (講談社選書メチエ)  ④は、こちらで書きましたね。私は、ブルース・ミュージックが大好きなので、発祥地であるミシシッピ・デルタが舞台であるだけで楽しく読めました。折りしもハリケーンが猛威をふるっていた直後に読んだので感慨深いです。元気に復興されることを祈っています。ガンバレ!





消えた少年たち〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)  ⑤は、どこかで書いたよな?と思いながら、ログを検索したところありませんでした。なにはともあれファミリー小説。力強い人間というものを実感しました。私は、子育ての経験がありませんが、将来もしかして子どもが出来たら、必ず読み返そう!と誓っています。そして、感動のラストシーン。「クリスマスとは、本来、かくあるべきものだぞ、コノヤロウ」と涙を流しながら、怒った記憶があるというのは、筆の誤りですが、暖かいクリスマス・ストーリーでもあります。


  このあと、ちょっと知的な本部門も考えたのですが、長くなったので今回はここまでにします。


(本稿以上)