悲しきポータルサイト

※本エントリは、他で書いていたものを持ってきたものです(2006年7月12日)。

■悲しきポータルサイト〜前編  

  ライブドアによる粉飾決算疑惑。

  資金還流スキームの中心に、投資組合というブラック・ボックスが存在していたことが明らかになってきた(注1)。投資組合。複雑怪奇であり、素人の私にはてんでクエスチヨンだが、なにしろ名称はおもしろい。一つ例に挙げてみると、「M&Aチャレンジャー1号投資事業組合」。血気盛ん、意気軒昂なネーミングだ。堀江たちが目指した時価総額世界一という野望を、濃密に凝縮していて、心意気が窺い知れる。今となっては、晩秋の哀愁を感じてしまうのだけど・・・。

  このように、今回の事件は、ファイナンス事業の暴走という様相を呈しているように思われる。しかし、ライブドアという会社の「本業」においても、実は物悲しい現実が、ノッタリと横たわっていたらしい。平成18年1月31日付日本経済新聞から引用してみると、

ライブドア〜虚妄の経営」
ライブドアポータルサイトにおける)広告収入は、年間数億円にとどまっていたとみられる。

  年間数億円とは、どの程度の位置付けなのかね?という疑問に答えるべく、同記事は二例を挙げている。ヤフーは、ライブドアよりも2.4倍の閲覧者数を擁するが、05年九月期中間決算では300億円近く、エキサイトは、ライブドアよりも閲覧者数がやや少ないといわれるが、同じ中間期に20億円以上の売上高を計上している・・・と。比較基準が、微妙に異なるところが、痛し痒しな比較事例ではあるものの、素人考えでも年間数億円という広告収入は、安いと思う(注2)。

  虚業尽くしといわれるライブドア。しかし彼らにも本業はあるのだ。すなわちポータルサイトの拡充である。拡充を企図するビジネス・モデルにおいて、最重要なるミッションは、大衆の集客・動員である。そのコア・ビジネス(?)を支える土台として、ポータルサイトへの広告掲載から得る広告収入、あるいは、ショッピングモールであるライブドア・デパートの手数料収入は、集客力に依存する。すなわち、ポータルサイトへの集客力が増大するに比例して、収入も増加すると予想される。


  さて、その黄金のビジネスモデルが、実は、「カラッポ」であったとは、一体なぜなのだろうか?

(本稿続く)

(注1)
一部新聞報道では、堀江曰く「箱を作れ!新しい箱を!!」と日常的に指示していたと報じられている。イロの指定は、なかったようですが。なお、投資組合の正式名称は、投資事業有限責任組合である(ようです・・)。

(注2)
ライブドアポータルサイトを柱とする「ネットメディア事業」の売上高は、05年九月期で58億円である。この観点で、上記エキサイトの例と比較すると、ほぼ同程度の売上高と考えられる。しかし、上記記事によると、この売上高には、堀江が講師を努めて高額な参加代金(一人8万円!!!)を徴収していたセミナー、堀江のテレビ出演料も含まれていた、とのことである。

p.s.
長くなったので、
続きは、近いうちに続きをアップします。




■悲しきポータルサイト〜後編
昨日の続きです。

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  ライブドアポータルサイト・ビジネスの根幹は、閲覧者を増大させて、ポータルへの広告収入等を収益にするというものである。そのビジネス・モデルの一環として、近鉄球団買収に名乗りを挙げ、また、堀江自ら広告塔となりテレビ出演することにより(注1)、ライブドアという会社の知名度を上げた。そして、"ライブドア"という抽象的存在の具現化であるポータルサイトライブドアも人口に膾炙されることになり、集客・動員力(=閲覧者数)はうなぎ上り、飛躍的に増加したことが、現象として確認されている。

  バラ色がまぶしい戦略成果である。MBAのケース・スタディに取り上げられてもおかしくない。すなわち、知名度アップのための営業活動→ポータルサイトへの集客アップ→広告収入の拡大。黄金の三段論法の完成である。しかし、三段目の広告収入の拡大には、辿り着けなかった。なぜか?同記事は、続ける。

ライブドアの広告主が少なかったのは、万人受けを目指す消費財企業などが敵対的買収のイメージを敬遠したからだ。

  記事では、敵対的買収という、それこそ万人が納得する負のイメージを例に挙げるにとどまっている。しかしながら、同じく万人が薄々と感じているように、「カネで買えないモノはない」と豪語する堀江自身への拒否反応(=アレルギー)が、広告主の胸を去来していたであろうことは、想像に難くない。

  繰り返しになるが、ポータルサイト・ビジネスは、客寄せビジネスである。多数の動員を背景に、広告掲載空間としての価値を向上させる。非常に単純明快である。しかし、その単純なビジネス・モデルが、実は単純ではなかったのである。すなわち、ポータルサイトには、集客動員力と同程度か、あるいはそれ以上に、空間・場として、ある種の品位が要求されていたのである。

  この"誤謬"は、インターネットのポータルサイト事業特有のジレンマであろうか?広告収入依存業態といえば、身近なところでは放送業界がある。視聴率競争に奔走する姿から明らかである。明の部分はきらびやかなテレビ局。そんなエスタブリッシュメント企業も、華麗な上っ面を開けてみれば、客寄せビジネスである。彼らも、ライブドアの物悲しい蹉跌を他山の石として、謙虚に学ぶ時が来たのかもしれない。

(注1)
ライブドアのナンバー2と言われている宮内が、「堀江は客寄せパンダ、人を呼べるコンテンツだ」という内容の発言をしている模様が、テレビで放送されていた。それを、痴呆的ニヤツキでコメントするニュースキャスター・・・。正直、吐き気がしました日曜夜。